・・・・・・・・ 東京民鉄 あと ひと駅

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13 新御徒町駅 (つくばエクスプレス)  電脳快速は商店街の地下を行く

 

20058月、日本最大の人口密集地である首都圏に突如として60km近い鉄道路線が新規開業。電脳文化(単にオタク文化ともいう)の中心地・秋葉原と、理系頭脳の集積地たる筑波研究学園都市を最速45分で直結することから、人の流れだけでなく、文化の流れをも変えると評されました。この路線、首都圏新都市鉄道という第三セクターが開業したもので、路線名のつくばエクスプレスTX)が、電車や会社を含めた全体を指すものとして浸透しました。当初、日本一の混雑といわれる常磐線の通勤地獄を解消するための並行路線として構想されたのですが、採算の問題からJR東日本が降りてしまい、民鉄として開業することになりました。その結果、(1)Suicaではなくパスネットを導入(2007年にPASMOに合流しますが)、(2)常磐線自身が強力なライバルを抱え込んでしまった、(3)民鉄限定の当欄で取り上げられることになった、ということになりましたよ。

私、電脳にも科学技術にも縁遠いのですけど、2003年度から年の半分は学園都市に通勤していて、開業後はTXを利用することも多くなりました。もちろん、秋葉原とつくばを行き来するだけで、途中下車の経験はありませんでした。この電車、秋葉原から南千住までは延々地下を走ります。23区をいまさら貫くのだから当然だけど、北千住を出て荒川を渡ると、またまたトンネルとなり、足立区を抜けるまで景色は見えません。ただ、埼玉・千葉・茨城県では、北関東独特の「原っぱ」の中を、気持ちがいいほどまっすぐに突っ走ります。利根川の鉄橋は、常磐道のトラックなどと競うように走り、爽快です。左前方に筑波山が見えてきたら終点近く。車両がさっぱりした通勤型で、しかもいま流行の軽車両なので、乗り心地がいまいちなのが残念ですが、「つくばまで行くのか」という心のハードルが下がったのは確か。以前、筑波大学での学会に1泊で行ったことがあったもんなあ。

 ドア上にある路線インジケーター  駅はすべてナンバリングされている

この路線が開通するまで、東京から茨城県方面への交通は、常磐沿線をのぞけば(含むこともある)高速バスに依存していました。東京駅八重洲南口のターミナルからバスが次々と発車していきます。鉄道関連の著作も多い政治思想史の原武史さんは、この方面を「第1象限」と表現していました(『鉄道ひとつばなし』、講談社現代新書、2003年)。西武や小田急、京王、東急など第2・第3象限の住民は、バス頼みの交通を不安に思うだろうけれど、慣れればそんなものだと思うし、定員制だからリクライニングシートに座って眠れるだけ気楽なのです。TX開通前は、つくばセンター(TXつくば駅と同じ位置にある)行きの高速バスが10分間隔で出ており、どれも満員で積み残しさえ出ていました。ところが昨秋から状況は一変し、高速バスは半数に間引かれて大苦戦。判官びいきの古賀は可能なかぎりバスを利用しつづけていて、TXとは知り合い程度の関係(笑)。それでも、運賃を全線で1150円とバスより安く設定したのは立派だと思います(その後バスが同額まで値下げし、今は往復1700円の格安券を発売している)。

 秋葉原駅の高速エスカレータ  この上を歩くと、降りるときがちょっと怖い(笑)

TX秋葉原駅は恐ろしく深いところにあります。JR線のホームからだと、普通に歩いて10分以上はかかります。上りでは、日本ではめずらしい高速エスカレータが設置されていて、通常モードよりかなり速い。それでも英国のエスカレータのほうが速いと思うけどね。ワンマン運転のためホームドアが設置されています。TXには、普通・区間快速・快速の3種別があり、利根川を越えて茨城県に入るのは後二者だけですが(交流電化に対応した車両のみ)、北千住まではどの列車も停まりますので、来たやつにお乗りください。秋葉原を出ると、右へ90度曲がって新御徒町へと進入します。上野や秋葉原に比べると知名度が低いので、東京に詳しくない方にとっては難読地名かもしれません。しん・おかちまちで、アメ横の入口にあたる山手線・京浜東北線の御徒町から、歩いてもそう遠くありません。江戸時代、将軍に近侍して警護する御徒衆(おかちしゅう)という人たちが集住していた地区です。新御徒町は、一足先に開通していた都営大江戸線の駅でもあり、有名な地名である隣りの御徒町にあやかったネーミングと推測されますが、字名は台東区元浅草と小島。

 
(左)日昼は静かな新御徒町駅ホーム  (右)春日通りに面した駅出口  都営線と共用です

大江戸線が開通した折に、一日乗車券を購入してあちこち乗り降りしましたが、新御徒町でも降りて少し歩きました。それ以来の来訪。アメ横好きなので、御徒町はしょっちゅう使うのですけど、少しだけ東にそれると、かなり雰囲気が違います。TX線はこの付近で、東西に走る春日通り(本郷三丁目〜湯島天神〜上野広小路と来た通り)の地下を行きます。この前後は、小さな寺院と、家内工業や零細な町工場が住宅と混在した地区。少しだけ開いた引き戸から、中年以上の職人さんが何かと真剣に向き合って作業している様子が見えたりします。軒先にやたらと植木鉢を並べるとか、開け放した玄関によしずをぶら下げるといったなつかしい光景が当たり前にみられます。それにしては人の気配があまりしないなあ。

いちおう山手線の外側ではあるけれど、下町方面は江戸期いらい「町」としての歴史がありますから、他の「ひと駅」地区とはずいぶん印象が違いますね。ただ、関東大震災(1923年)や東京大空襲(1945年)の被害を最も多く受けたのも下町です。高度成長以降は、残念ながら東京の中心とはいえなくなっていきました。表通り沿いにはマンションが増えて、路地に面した小さな住宅との対比が独特の景観は、台東区や墨田区に特徴的なものです。

 
(左)地上に出れば春日通り  直進すると御徒町・上野広小路  (右)ブロックの内部はこういう感じの景観がつづく

この付近は、表通り(清洲橋通りや春日通り)もさほど人の流れがあるわけではなく、むしろいくつかの商店街に特徴がみられます。とくに、駅から清洲橋通りを渡ってすぐのところにある佐竹商店街は、都内でも屈指の商店街と名高く、ラジオの中継などでよく耳にします。佐竹というのは古い地名かなと漠然と考えていたのだけど、由緒書きによると、出羽久保田藩(いわゆる秋田藩)佐竹氏の上屋敷がここにあったからだそうです。アーケードで覆われた500mほどの商店街を歩いてみました。山の手の商店街にありがちな大型店舗や、カラオケ、ゲーセンなどのアミューズメント店、チェーンorフランチャイズ関係などがほとんどみられず、古いタイプの薬屋さんとか古いタイプの服屋さんとか古いタイプの履物屋さんなどが軒をつらねています。表に出している売り物が甚平とか雪駄だもん。洗濯屋さん(クリーニング店のことを昔はそう呼んだのよ)は、商店街とのあいだにガラスの仕切りがないオープンカウンター方式で(魚屋さんに近いと思えばいいですね)、なつかしいスタイルだなあ。で、当然のように、古いタイプの喫茶店もある。間違ってもカフェなどではない。喫茶店で、ショーケースに商品見本を並べるところは少なくなっていますが(コーヒーとかジュースなんて想像できないほうがどうかしているもんね)、こういうところには、あるんだな。で、カレーとかナポリタンが必ずあるんだな。で、どれも美味くなさそうなんだな(笑)。

  
佐竹商店街  いかにも商店街、といった感じの靴屋や洋品店、そして箱入りティッシュをしのぐ勢い!のロールペーパー

 商店街南端  味のある喫茶店・・・でも、「シャッター」も多いですね

商店街のすぐ近くで育ったため、いまでもそういう雰囲気は大好きで、他の地方へ出張してもたいてい商店街を歩きます。それで、嫌というほどワンパターンの傾向を見せつけられます。モータリゼーション、郊外型大型店舗への顧客流出、新住民の商店街からの逸走、そして経営者の高齢化と後継者難・・・その結果、「シャッター通り」という現象がどこでも顕著になってきています。東京都心だって例外ではない。やや辛口のいいかたになるけれど、商店街は、すでに20年前に時代へのキャッチアップを果たせなかったのだと思います。小学校の社会科教育の実践で、スーパーと商店街を比較させ、「商店街のよさ」を答えさせる手法があります。学会や事例報告では定番のネタ。でもさ、それって古賀が子どものころのままじゃん。その結論に導かせたって、その子どもが将来、商店街の担い手になるわけではない。私が関心をもって歩くというのも、ある種のノスタルジーからであって、自分の買い物はほとんどすべてスーパーか大型店だもの。商店街は、高くて、品揃えが悪くて、あちこち回らなければならなくて、常連でないと敷居が高いもの。

佐竹商店街を抜けて、さらに南へしばらく行くと、鳥越神社へとつづく本通り、通称おかず横丁にいたります。これも有名ですね。こちらはオープンエア?で、狭い道路の両側に店舗が並ぶという、参道ならではのスタイル。野菜なんかはかなり安かったし、量り売りの味噌屋さんや佃煮屋さんなどもおもしろかったし、縁台を出して涼んでいるおじさんがいるところなど、昭和のムード満開でした。でもね、どちらの商店街も、完全に中高年オンリーの世界でした。「祝 開業!」という看板がいまも掲出されているつくばエクスプレスの客層とは、どこまでもパラレル。どちらがいいとか悪いということではなく、そういうギャップが、いま日本社会全体にみられる構造的なものだということなのです。

 

新御徒町駅 (しんおかちまち)
首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線 秋葉原起点から1.6km
開業:2005
次の駅:浅草

 

 

次回は・・・
西太子堂駅
(東急世田谷線 三軒茶屋駅から「ひと駅」)

 

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